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2026年、日本不動産は選別の市場へ──投資家に問われる“判断の精度”

2026/1/13

不動産市場予測コラム

2026年、投資家は“動くべきか、待つべきか”の判断を迫られる

「不動産価格は本当に下がるのか」
「金利が上がる中でも、今は買っていいのか」
「2026年に向けて、投資家は何を基準に判断すべきか」

こうした問いを抱えながら、多くの投資家が現在の不動産市場を見つめている。

実際、直近の不動産価格指数(令和7年9月・令和7年第3四半期)を見ると、全国の住宅総合は145.4で前月比0.0%と“高止まり”の状態が続いている。内訳も、住宅地は120.7で0.3%増、戸建住宅は118.6で0.7%減、マンション(区分所有)は222.2で0.1%増と、全体としては大きく崩れていない一方で、用途によって温度差が出ている。

取引件数も崩れてはいない。既存住宅販売量指数(令和7年9月)では、合計の季節調整値が128.7で前月比4.9%増となり、マンションの季節調整値も132.3で前月比6.4%と持ち直しが見られる。法人取引量指数(令和7年9月)も合計が277.2で前月比1.3%増、住宅合計は308.3で2.7%増と、資金が急に市場から消えているわけではない。

しかし一方で、「これまでと同じ投資手法が、そのまま通用するとは思えない」という感覚が、市場全体に広がっているのも事実だ。価格が下がらないから安心、取引が増えたから強い――そう単純に言い切れない状況が、数字の中身からも見えてくる。

2025年12月末のブログでは、
「物価高と金利上昇による実需層の慎重化」「国内投資家の選別姿勢」「海外資本が下支えする一部アセットの底堅さという、市場の基本構造を整理した。

その後に公表された価格指数、既存住宅販売量、法人取引量といったデータは、この見立てを大きく否定するものではなかった。むしろ、全国住宅総合が前月比0.0%で高値圏に張り付きながら、戸建が下がり、マンションが底堅いといった動きは、市場が想定通り「静かな高値圏」と「三極化」へ進んでいることを裏付けている。

では、2026年の不動産市場はどこへ向かうのか。
そして投資家は、どのような姿勢で臨むべきなのか。
順を追って見ていこう。

2026年は「買えない年」ではなく「間違えられない年」

2026年の不動産投資環境を一言で表すなら、
「チャンスは存在するが、選択を誤ると結果が大きく分かれる年」
と言えるだろう。

物価高と金利上昇は一時的な現象ではなく、実需層の慎重姿勢は2026年に入っても続く見通しだ。住宅ローン返済への意識は確実に高まり、一次取得層では「今すぐ買う明確な理由がなければ動かない」という判断が、すでに一般的になりつつある。

国内投資家も同様で、金融機関の融資姿勢は引き続き厳格で、利回りの低下や融資条件の見直しを受け、投資規模を抑えつつ、確度の高い案件に絞る動きが目立っている。市場の数字が“横ばい”に見える局面ほど、実際には買い手の目線が厳しくなり、条件の良し悪しで結果が分かれやすい。

これは市場の冷え込みではなく、不動産市場が「量の拡大」から「質の選別」へ完全に移行したサインと捉えるべきだろう。

実需層と国内投資家は「守り」を重視する局面へ

実需層、つまり自ら住むために住宅を購入する層では、物価高と金利上昇の影響がより明確に表れている。その結果、「今すぐ購入する必要はない」「もう少し様子を見たい」という買い控えが広がっている。

一方で取引自体は動いており、既存住宅販売量指数では全国合計が前月比4.9%増となった。ただし、この数字を“需要が全面的に強い”と受け止めるのは危険だ。マンションが前月比6.4%と強い一方で、エリアや規模によって伸び方には差がある。実需の動きは回復というより、「買う人だけが買う」という選別色が濃い。

国内の個人・法人投資家も同様で、金融機関は自己資金比率や返済余力をこれまで以上に重視している。加えて物件価格の上昇によって表面利回りは低下しやすく、投資家の側も“数を買う”より“外さない案件だけを拾う”方向に寄っている。

これは「投資マネーが市場から撤退している」というよりも、無理な投資を避ける正常化のプロセスと捉える方が実態に近い。実際、法人取引量指数も合計で前月比1.3%増、住宅合計で2.7%増と、資金が止まっているわけではない。

海外投資家は日本市場への関与を継続

一方で、海外投資家は引き続き日本不動産市場に対して一定の関心と投資意欲を維持している。円安が続く中、日本の不動産は外貨ベースで見ると割安感があり、政治的安定性や法制度の透明性も評価されている。

もっとも、海外マネーも一様ではない。中国本土系の資金は国内規制や資金流出管理の影響を受け、投資ペースが鈍化する可能性が高い。一方で、欧米やアジアの機関投資家は、日本を短期売買の市場ではなく、長期的に資金を置く先として捉える傾向を強めている。

東京市場は「下がらないが、上がりにくい」局面へ

東京の不動産市場では、開発余地が限られる中で、建材価格や人件費の上昇が新規供給を抑制している。供給が増えにくい以上、価格が大きく下がりにくい構造は維持されている。

ただし、「東京だから強い」と一括りにはできない。

最新の不動産価格指数では、東京都の住宅総合は2.5%減、住宅地は8.1%減、戸建住宅は2.4%減と調整が見られる。一方でマンション(区分所有)は横ばいを維持しており、内部での分化が進んでいる。

既存住宅販売量指数では東京都の取引は増加しているが、価格が強いというより「動く物件だけが動く」状態に近い。結果として、買い手は様子見、売り手は無理に値下げしないという、高値圏での膠着相場が形成されやすい。

地域格差は拡大し、「三極化」が定着へ

価格上昇の地域的な偏りも、より明確になっている。上昇の中心は都心部や再開発エリアに集中する一方、周辺都市では緩やかな調整が続いている。

実際、関東の住宅総合は153.4で0.7%減と足踏みする一方、近畿の住宅総合は144.5で0.2%増と微増にとどまるなど、地域で方向感が揃っていない。都道府県で見ても、東京都が住宅総合で2.5%減となる一方、大阪府は住宅総合が156.4で2.5%増、マンション(区分所有)も218.8で1.3%増と、地域によって動きがはっきり分かれている。

現在の構図は、
・都心:高値を維持
・周辺都市:横ばいから緩やかな下落
・地方:停滞
という、不動産市場の三極化だ。かつてのように「どこでも上がる時代」は、完全に終わりを迎えつつある。

賃料上昇は局地的、過度な期待は禁物

東京23区の住宅賃料は前年比で約10%上昇しており、一見すると投資環境は良好に映る。しかしこれは都心部に需要が集中している結果であり、郊外や地方では人口減少と需要低下が続いている。

賃料が上昇しているエリアと、そうでないエリアの差は大きい。局地的な強さが全国市場を支えているわけではない点は、特に初心者投資家が注意すべきポイントだ。

ホテル市場は海外資本が引き続き下支え

海外資本の存在感が特に強いのがホテル市場である。2025年に本格回復したインバウンド需要は、2026年も円安を追い風に堅調な推移が見込まれている。

また、住宅以外のセクターに目を向けると、商業用不動産価格指数(令和7年第3四半期)では全国商業用不動産総合が147.0で前期比0.9%増となり、店舗は168.8で2.9%増と底堅い。一方でオフィスは168.9で5.4%減と弱く、用途による差がより鮮明になっている。三大都市圏でも、オフィスが172.5で9.5%減となる一方、倉庫は144.8で11.6%増、工場は150.9で3.9%増と、資金が向かう先が明確に分かれている。

この結果、ホテルを含む「収益が読みやすい用途」には引き続き資金が集まりやすく、東京・大阪といった大都市圏に加え、空港アクセスの良いエリアや主要観光地周辺では、投資家の関心がさらに高まるだろう。

結論:2026年の不動産市場は「様子見」ではなく「見極め」の年

2026年の不動産市場は、「動かない人が正解になる年」でも、「誰でも儲かる年」でもない。

市場資金は引き続き流入しているものの、地域や用途による二極化・三極化は一段と鮮明になっている。市場の焦点は、もはや単純な価格の上昇・下落ではなく、どの地域や資産が投資として成立するのか、あるいは成立しないのかを見極める段階へと移行しつつある。

このため、2026年は投資機会が失われる年ではない。一方で、投資判断の精度がこれまで以上に問われる年になるとみられる。

これから不動産を見る人が押さえるべき3つの視点

初心者であっても、次の3点を意識するだけで、「なんとなく不安」「何を基準に判断すればいいかわからない」という状態から、一歩抜け出せる。

  1. そのエリアに、今もこれからも人が集まる理由があるか
  2. 実需(住む・使う人)がはっきり存在しているか
  3. 海外投資家が評価する構造(立地・用途・収益性)を持っているか

この視点で見れば、「価格が高いから危険」「利回りが高いから安全」といった単純な判断が、いかにリスクを孕んでいるかが見えてくるはずだ。

「何もしないこと」も、立派な選択肢

もう一つ大切なのは、今すぐ動かない判断も、決して逃げではないということだ。

市場が高値圏にあり、方向感が見えにくい局面では、
・知識を蓄える
・数字の見方を学ぶ
・成功例だけでなく失敗例を理解する
こうした準備期間そのものが、将来の投資成果を大きく左右する。

2026年の不動産市場は、感覚や勢いで動く人ほど苦しくなり、構造と数字を理解した人ほど、安定した判断ができる市場だ。

チャンスは確かに存在している。
ただしそれは、「誰にでも」「どこにでも」転がっているものではない。

だからこそ、焦らず、煽られず、冷静に見極めること。
それが、これから不動産と向き合うすべての人にとって、最も堅実で、最も再現性の高いスタンスと言えるだろう。

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